ジョブズ氏が否定したタッチ対応Macはなぜ実現?Apple社内の攻防

MacBook Proのイメージ画像

海外メディアの報道によると、Appleは10月28日のイベントで、タッチ操作に対応したMacBook Proを発表する見込みです。社内では、顧客の期待の変化を見た経営陣と反対するデザインチームが、タッチを選択肢にとどめる形で折り合ったと伝えられています。Appleは考え方を全面的に改めたというより、触る場面を絞ることで、長く否定してきた画面に触るMacを受け入れた可能性があります。MacBook Air(M1)とWindows PCを使う筆者の視点から読み解きます。

MacBook Proのタッチ対応の背景は顧客の期待の変化

MacBook Proのタッチ対応は、顧客の期待が変わったという経営陣の判断が背景にあり、開発は約4年前に加速したと報じられています。ただし、Appleはタッチ機能と最終価格をまだ正式に発表していないとされます。需要を重視した経営陣と、使い勝手と設計を守ろうとしたデザインチームの言い分をどちらも生かすことが、後の妥協案の条件になったとみられます。

経営陣はWindowsノートの動向に需要の変化を見た

ティム・クック前最高経営責任者(CEO)とジョン・ターナスCEOは、顧客がMacにもタッチ画面を求め始めたと感じていたといいます。Windowsノートでタッチ画面の機種が出続けてきたためとされます。

MacとWindows PCを行き来する筆者の感覚では、Macだけ画面に触れられないことを物足りなく思う人がいても不思議ではありません。経営陣が重く見たのは、タッチが誰にとっても必須かどうかではなく、選べないこと自体が不満の種になり得る点だったと考えます。

デザインチームはmacOSと本体設計への影響を懸念

インダストリアルデザインチームは、macOSの使われ方と本体の物理的な設計に影響しかねないとして反対を続けたといいます。具体的な懸念点は筆者の推測ですが、ソフト面ではボタンやメニューの大きさが考えられます。ハード面なら、画面を押したときの揺れや蓋の強度も論点になりそうです。

macOSの操作体系は、トラックパッドを軸に磨かれてきました。指が加われば画面の作り方から見直す必要が出てくる可能性があり、デザインチームが慎重になるのもうなずけます。

妥協案はタッチを選択肢にとどめ主役は従来の操作

妥協案の特徴は、タッチの役割をあえて小さくした点にあります。経営陣が求めたタッチ対応と、デザインチームが守りたい従来の使い心地を両立させる狙いがあったとみられます。

経営陣は触れる選択肢を得られ、デザインチームはこれまでの操作体系を守れます。双方が譲れない部分を確保できる配分だったのではないでしょうか。

入力の中心はキーボードとトラックパッド

報道によると、画面ではスクロールやピンチ、ズームなどができる一方、主な入力はキーボードとトラックパッドのままです。MacBook Air(M1)で原稿を書く筆者の使い方に当てはめると、文字入力やファイルの整理の進め方は変わりません。変わり得るのは、長いページを送る、写真を拡大するといった一部の操作です。

トラックパッドから手を少し伸ばせば済む操作に限って、もう1つの手段が加わるイメージに近いと感じます。普段の作業の流れはそのまま保てるため、タッチを使わない人にとっても、操作面での負担は生じにくい設計といえそうです。

macOSは触り方に合わせて表示を切り替える

macOS Golden Gateは、触り方に応じて一部の操作部品を調整し、一部のボタンに触れると指の周りにメニューを出すと報じられています。トラックパッドのポインターは小さな点で狙えますが、指先は面で触れるため、同じ大きさのボタンでは押し間違いが起きやすくなります。触り方で表示を変える仕組みは、デザインチームが懸念したmacOSの使われ方の変化に対する、ソフト側からの答えになっていると読めます。

ジョブズ氏の否定とは画面に触る時間の前提が違う

スティーブ・ジョブズ氏が否定した垂直のタッチ画面と今回の設計は、画面に触る時間の前提が異なるとみています。ジョブズ氏は2010年、垂直に立てたタッチ画面のコンピューターを、人間工学的に使いにくいと批判しました。

ここからは筆者の分析ですが、使いにくさの一例として、画面が手から遠く、触り続ければ腕を上げたままになる点が挙げられます。今回はタッチを主要な入力にしないため、画面に触るのは必要な場面に限られ、腕への負担を避けやすいと考えられます。

Appleは、触り続ける前提ではなく、ときどき触る前提でMacのタッチスクリーンを組み立て直したと解釈できます。腕を上げ続けるかどうかは使う人の習慣にも左右されるため、実際の負担は発表後の使用感を見て判断したいところです。

タッチ対応後もMacとiPadの役割は分かれたまま

AppleはタッチをMacに加えた後も、MacとiPadを別の用途向けに開発し続ける方針だといいます。主な入力がキーボードとトラックパッドのまま残る以上、タッチ対応のMacBook ProはiPadの代わりにはなりにくいでしょう。

キーボード中心の作業を、画面への操作が補う存在と受け止めるのが自然かもしれません。iPadとMacを使い分けている人にとっては、両者の分担が大きく崩れることはなさそうです。

10月28日は触って何ができるかと価格に注目

10月28日のイベントで注目したいのは、画面に触って何ができるのか、触らない人の使い勝手は変わらないのかという2点です。2つの答えがそろえば、今回の妥協案の実像がつかみやすくなるはずです。

価格は現行の上位モデルより高くなる見込みだと伝えられています。値上がりするなら、追加される操作が自分の作業に本当に必要かどうかが、新モデルを評価するうえでの分かれ目になります。

Photo: MacObserver

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