NATO(北大西洋条約機構)は世界最大の軍事同盟ですが、iPhoneおよびiPadがNATOの機密情報を扱う用途でも使用できるとして、認証を得たと話題になっています。とはいえ、機密情報には複数の区分があります。Apple製品が認められたのはどのレベルなのでしょうか。
本当にNATOの機密情報を扱えるのか?
Appleは2月26日付のプレスリリースで、「iPhoneとiPadがNATOの機密情報の取り扱いに適していると認められた」と発表しました。これはすごいことに見えますが、掘り下げると、認可が下りたのは「NATO RESTRICTED(NR/制限付き)」であることがわかります。これは、NATOが加盟国間で共有する情報に付ける機密区分(分類ラベル)のうち、最も低い機密レベルです。
NRに分類される情報は、公開・無断開示が許可されない一方で、上位区分(NATO CONFIDENTIAL/SECRET/COSMIC TOP SECRET)ほど重大ではない、という位置づけです。
つまり、消費者向けデバイスとしてNATOの機密情報を扱える認証を得たのは事実ですが、対象はあくまで最も低い機密レベル(NR)に限られる、という注釈は必要でしょう。
Apple役員もコメント
「この成果は、Appleが“これまでの常識だったセキュリティ提供のあり方”を変えてきたことを示しています。iPhone以前は、高度に安全な端末は、政府機関や大企業が特注のセキュリティ対策に莫大な投資をして、ようやく手にできるものでした」と、Appleのセキュリティエンジニアリングおよびアーキテクチャ担当副社長、イワン・クルスティッチ氏は述べています。
「それに対しAppleは、すべてのユーザーのために世界で最も安全なデバイスを作り上げてきました。そして、その同じ保護機能が、業界で他に例のない形で、NATO加盟国の保証要件に基づく認証を取得したのです。」
最近あまり見なかったプライバシーマーケティングの一環か
NATOの機密区分(NR)に対応できるということは、一般ユーザーにとっては十分すぎるほどのセキュリティが備わっている、と捉えることもできます。今回のプレスリリースは、最近はやや控えめだったAppleの「プライバシー」マーケティングの一環なのでしょうか。
Appleはかねてから「プライバシー」を他社ブランドとの差別化要素として打ち出してきました。とくに、広告を中心とするビジネスモデルで顧客データを収益化する大手テック企業がある中で、Appleはハードウェアの売上を主な収益源としてきたため、「顧客データに手を出す必要がない」と主張してきました。
しかし、この傾向も少し変わりつつあります。Appleも自社サービス内での広告枠の拡大を進めており、サービス事業の売上も上昇し続けています。
他のNATO認可デバイスはどんなものがある?
NATOの製品検索ページで、iPhone/iPad以外にどのような端末が機密情報の取り扱い認可を得ているのか調べてみると、前例は多くないようです。その中で、比較的一般ユーザーにも入手しやすそうなのが、Bittium Tough Mobile 2でした。
Bittiumはフィンランドを拠点とする企業で、ソフトウェア製品Bittium Secure Suite™がiPhone/iPadと同じく「NATO RESTRICTED(NR/制限付き)」への対応として掲載されています。
デバイス自体はかなり物々しい雰囲気で、製品ページには戦場に立つ人物が端末を使用している様子が掲載されているほどです。
そんな軍事用途を想起させる製品群の中で、iPhone/iPadが認証されたというのは興味深いところです。一般消費者にとっても、プライバシーやセキュリティの観点から一定の安心材料になる、と言えるのではないでしょうか。
