なぜスマートフォンに突如「AI」が搭載されだしたのか

A11 Bionic


 
Googleの開発したAlpha GOが世界トップレベルの囲碁棋士を事も無げに撃破したのと時を同じくして、スマートフォン市場にもとあるキーワードが流行るようになりました。「AI」です。しかし、なぜ突如スマートフォンにAIが搭載されだしたのでしょうか。また、本当にAIと呼べるようなものなのでしょうか。ニュースサイトAndroid Authorityが興味深いコラムを公開しています。

厳密には「AI」ではない?

結論から言ってしまえば、スマートフォンに搭載されている「AI」は、厳密にはAI(Artifical Intelligent)ではありません。
 
Android Authorityによると、AIとは「人間のように考える」あるいは「我々の脳に極めて似た能力を持った人工的知能」を指すのであって、スマートフォンに搭載されているのは「機械学習(マシンラーニング)」とでも呼ぶに相応しいものだそうです。
 
AIとはまったくの無関係ではありませんが、あくまでも機械学習とは、与えられた結果をもとに学習し、将来的な決定を下すために設計されたコンピューター・プログラムに過ぎません。
 

 
したがって、ニューラルエンジンをサポートする、iPhene XのA11 Bionicチップや、HuaweiのMate 10に搭載予定のKirin 970は、ともにAIがスマートフォンに搭載されているかのような印象を受けるものの、実際は「最先端のAIプロジェクトに近づいてもいない」と、Android Authorityは述べています。

ハードウェアの性能に大きく依存

ただ、このニューラルエンジンの搭載によって、スマートフォンの技術が大幅に躍進を遂げたのも確かです。
 
画像&音声処理、ユーザーの活動予測、言語処理、データベースの照会速度、暗号化……こういった分野は、iPhone XのFace ID(顔認証)を例に出すまでもなく、大きく前進することとなりました。
 
とはいえ、結局はニューラルエンジンも、クラウドやスマートフォンに搭載されたハードウェアの性能に依存するのは確かでしょう。
 
Android Authorityも、スマートフォンに搭載された一般的な64ビットCPUが、こういった処理に適しているわけではなく、 8ビット/16ビット浮動小数点数演算やパターンマッチングなどは、専用のハードウェアに敵わないと指摘します。
 
では、結局スマートフォンに搭載された「AIチップ」は、所詮はオモチャに過ぎないのでしょうか。
 
Android Authorityによれば、そういうわけでもないようです。チップが特別なプロセッサを有し、高性能化するに従って、複雑な演算が可能になったり、データソートのアルゴリズムを走らせたりすることができるようになるため、スマートフォン内の処理効率化には大きく寄与するとも述べています。

最先端の技術と比べれば厳しいが、可能性は切り開いている

まとめると、以下のようになります。
 
実際にはAIと呼べるようなものではありませんし、スマートフォンというハードウェア上の制約から、ニューラルエンジンのパフォーマンスにも限界があります。
 
おそらく商業的な観点から、正確性よりも、消費者の購買意欲を高めるような分かりやすさが重視されているということなのでしょう。
 
しかし、スマートフォン単体で見れば、実際にニューラルエンジンの採用によって、様々なことが可能になったのは間違いありませんし、チップの高性能化にともなって、処理の効率化にも寄与しているというわけです。
 
 
Source:Android Authority
(kihachi)

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