次期チップ「M7 Ultra」が最大1.5TBのメモリに対応する設計だと、海外メディアが報じました。実現すれば、Appleシリコン搭載Macが2019年発売のMac Proの最大構成に7年ぶりに並ぶことになります。ただし登場は2028年が目標とされ、今年後半に控えるM5 Ultra(最大768GB)がつなぎ役となる見通しです。
世界的な供給不足の中で、1.5TB構成が実際に製品化されるかは、なお不透明といえます。
1.5TBメモリが意味する7年ぶりの大台
報道によると、Appleは次期チップM7 Ultraを、最大1.5TB(1,536GB)のメモリに対応させる設計を進めているようです。これは今年後半に予想されるM5 Ultraの上限768GBの、およそ2倍にあたります。
数字の大きさ以上に注目したいのが、この1.5TBという値が持つ意味です。2019年に発売されたIntel版Mac Proは、最大1.5TBのメモリを積めました。Appleシリコンへの移行後、この大台に届いた製品はありません。M7 Ultraが1.5TBに対応すれば、Appleシリコン搭載Macが7年ぶりに当時の頂点へ並ぶ形になります。
ただし海外メディアは、慎重な見方も忘れていません。設計上は1.5TBを支えられても、実際にその構成が販売されるかは業界の状況次第、というものです。世界的なメモリ不足が続いており、大容量の実現には不確実さが残ります。
Appleシリコンのメモリが頭打ちだった理由
そもそもAppleシリコンのMacは、これまでメモリ容量が伸びにくい構造を抱えてきました。理由は、メモリチップをプロセッサと同じパッケージ上に密着させて実装しているためです。この一体化によって極めて高速なデータのやり取りが可能になり、ユニファイドメモリという強みが生まれます。
半面、積めるメモリの量はチップの物理的な大きさに左右されてしまう仕組みです。容量を増やそうとすれば、パッケージそのものを拡張しなければなりません。ここが従来型のPCワークステーションとの違いだといえます。
対する2019年のMac Proは、基板上のスロットに差し込むDDR4メモリを採用していました。増設や交換が利く一方で、メモリ帯域幅の面ではユニファイドメモリに分があります。つまり同じ1.5TBでも、M7 Ultraが目指す1.5TBは中身が別物です。仮に実現すれば、帯域を保ったまま容量の壁を越えられる点に、今回の設計の価値があります。
512GBの消滅と上限メモリの行方
足元のメモリ事情を踏まえると、1.5TBという到達点の意味はいっそう大きいはずです。現行モデルの選択肢がこの1年で急速に狭まる一方、上限そのものは世代を追って伸びてきました。
192GBから1.5TBへ上限はどう伸びたか
現行のMac Studioに載るM3 Ultraは、発売当初こそ最大512GBのメモリを選べました。ところが2026年3月に512GB構成が姿を消し、5月には256GB構成も廃止されています。チップ自体は512GBに対応しますが、現在Apple Storeで注文できるのは96GB構成のみです。背景にはメモリ不足があるとみられます。
チップ世代ごとに上限を並べたのが下表です。
| チップ | 最大メモリ | 位置づけ |
|---|---|---|
| M2 Ultra | 192GB | Mac Proに搭載 |
| M3 Ultra | 512GB対応(現在は96GBのみ) | 上位構成の販売が終了 |
| M5 Ultra | 768GB(予想) | Appleシリコンの新記録 |
| M7 Ultra | 1.5TB(予想) | 2019 Mac Proに並ぶ |
| 2019 Mac Pro(参考) | 1.5TB | ソケット式DDR4を採用 |
こうして見ると、M7 Ultraの1.5TBは飛躍というより、途切れていた系譜への回帰と呼べます。
登場は2028年でM5 Ultraがつなぎ役
注意したいのが、この1.5TBがすぐ手に入る話ではない点です。海外メディアの見立てでは、M7 Ultra搭載モデルの登場は2028年が目標とされています。それまでの高性能機を担うのが、今年後半に予想されるM5 Ultra搭載のMac Studioです。
Mac Studioの世代交代をM5 Ultraが年内でM7 Ultraが2028年という二段構えで進めるとの見方は、以前から報じられてきました。1.5TBの大台は、あくまで数年先を見据えた設計目標として受け止めておく必要があります。
約570万円のメモリは誰のためか
1.5TBが実現するとして、次に浮かぶのは費用と使い道の問題です。結論から言えば価格は個人の手に余る水準となり、主役は一部のプロやAI用途に絞られていきます。
メモリ増設だけで約570万円という試算
海外メディアが現行の価格体系から見積もったメモリ単価は、1GBあたり約25ドルです。これを基に128GBから1.5TBへ増設すると、追加費用は3万5,000ドル超に膨らみます。本体代は含まない、メモリ増設分だけの数字です。
これを現在の為替(約1ドル162円)で換算すると、約570万円に達します。しかも6月25日の価格改定で、現行のM3 Ultra搭載Mac Studioは66万8,800円から89万9,800円へと約34.5%引き上げられました。上位構成ほど値上げ率が高く、メモリ高騰が価格へ直接響いた形といえます。1.5TB構成が仮に登場しても、個人が気軽に選べる金額にはならないでしょう。
大容量を求めるAI需要が大容量を阻む皮肉
では、これほどのメモリを誰が必要とするのでしょうか。有力なのが、手元でのAIモデル実行です。大規模言語モデルは、パラメータ数が多いほど広大なメモリを要します。海外の解説では、512GBのM3 Ultraで6,000億超のパラメータのモデルを丸ごと動かせるとされました。推計では、1.5TBで1兆規模のモデルも射程に入る可能性があります。
手元で大規模モデルを動かしたいクリエイターやエンジニアにとって、外部のAPIに頼らず高い秘匿性で推論できる点は見逃せない魅力です。とはいえメモリだけで約570万円という水準では、費用対効果が見合うのは巨大モデルを日常的に回す一部の用途に限られます。多くの実務では、年内登場が見込まれる最大768GBのM5 Ultraのほうが、現実的な受け皿になるでしょう。
皮肉なのは、その大容量を阻んでいるのも同じAIの需要だという点です。AIサーバー向けの高帯域メモリに生産が集中し、DRAM全体が逼迫しています。この逼迫は、新型Macの発売延期が取り沙汰される一因であり、現行Mac Studioの供給にも影を落としてきました。ローカルAIのためにメモリを積みたいのに、そのAIブームが供給を細らせています。M7 Ultraの1.5TBは、この綱引きの先にある一つの到達点なのかもしれません。
