オンライン会議では、AIを使った議事録作成が当たり前になりつつあります。しかし、これをプライベートな会話にまで持ち込むのは違うのではないか――。ライターのジョーン・ウェステンバーグ氏が執筆したブログ記事が話題になっています。
これまで誰も「ノー」と言えなかったこと
ウェステンバーグ氏は、自身の体験をもとに、AI議事録ツールがもたらす違和感を指摘しています。Zoomなどのオンライン会議では、AIによる文字起こしや議事録作成がごく普通に行われるようになっていますが、それをカフェでの対面の会話やプライベートな空間にまで持ち込むのは、また別の問題ではないかという内容です。
同氏は、ある人物とカフェで会うことになり、その場で「AIを使って議事録を取っても問題ないですよね?」と了承を求められたといいます。そのとき、本当は「いや、やめてほしい」と言いたかったものの、空気を悪くしてしまいそうで、どう答えればよいかわからなくなったそうです。
ここで問題となっているのは、単に録音されることへの抵抗感だけではありません。本来はその場限りで消えていくはずだった会話が、AIによって文字起こしされ、オンライン上に記録として残る可能性があることです。一度記録された会話は、本人の意図を離れて保存、検索、共有、再利用される余地があります。
表のステージと舞台裏の違い
ウェステンバーグ氏が重要視しているのは、人間の会話における「表のステージ」と「舞台裏」の違いです。
人は誰もが、常に公式な場で発言しているわけではありません。友人や家族との会話では、未整理の考えや冗談、弱音、外では言えない本音を口にすることがあります。そうした会話は、記録に残らないという前提があるからこそ成り立つものです。
しかし、インターネットに接続されたAIが生活のいたるところに入り込むことで、この“舞台裏”の存在が脅かされつつある、というのが同氏の問題意識です。
確かに、話すことすべてが「表のステージ上での発言」として記録されてしまう世の中を想像すると、怖いものがあります。
Appleの場合はどうか?
では、Apple純正アプリの文字起こし機能はどうでしょうか。
Appleの「メモ」アプリでは、録音した音声を文字起こしする機能があります。また、Apple Intelligenceを使用すると、文字起こしされた内容を要約することもできます。
ここで重要なのは、「文字起こし」と「要約」は別の機能だという点です。通常の文字起こしについては、Apple Intelligenceの要約機能とは別に提供されています。一方で、Appleはメモの文字起こし処理が常にオンデバイスで完結すると明記しているわけではないため、オンデバイス処理だと断定はできない状況です。
Apple Intelligenceを使った要約では、処理内容によってPrivate Cloud Computeが利用される場合があります。Private Cloud Computeは、iPhoneやMacだけでは処理しきれない複雑なAI処理を、Appleの専用クラウド上で実行する仕組みです。
つまり、ウェステンバーグ氏の視点から見ると、まず重要なのは「オンデバイスだけで処理されるのか」「クラウド処理を含むのか」という違いです。そしてクラウド処理を含む場合には、どのような仕組みで処理され、データが保存されるのか、第三者がアクセスできるのかを確認する必要があります。
リアルタイムでは「ライブキャプション」「ボイスメモ」が利用可能
Apple純正機能でリアルタイムの文字起こしを行いたい場合、アクセシビリティ機能の「ライブキャプション」を使う方法や、「ボイスメモ」を使用する方法があります。
プライバシー面では、ライブキャプションについては、AppleがMac版で音声をデバイス上で処理すると明記しています。そのため、ライブキャプションはオンデバイス処理の機能とみてよいでしょう。
一方、ボイスメモについては、録音中にリアルタイムで文字起こしを表示できることはAppleのサポートページで案内されていますが、処理がオンデバイスで完結するとは明記されていません。そのため、「ボイスメモの文字起こしもオンデバイス処理とみられる」とは言えるものの、「確実にオンデバイス」と断定するのは避けたほうがよさそうです。
Apple純正の文字起こし機能と処理方法まとめ
Apple純正アプリの文字起こし機能は、一見すると似ているように見えますが、リアルタイムで使えるもの、録音後に確認するもの、Apple Intelligenceによる要約が加わるものなどに分かれます。主な違いを一覧にまとめました。
| 機能 | 文字起こしのタイミング | オンデバイス処理 | Apple Intelligence | Private Cloud Compute |
|---|---|---|---|---|
| ライブキャプション | リアルタイム | あり ※AppleがMac版で明記 | 不要 | なし |
| ボイスメモ | 録音中/録音後 | 可能性が高い ※Appleは明記せず | 文字起こし自体は不要 | 文字起こし自体には不要とみられる |
| メモの録音 | 録音中/録音後 | 可能性が高い ※Appleは明記せず | 文字起こし自体は不要 | 文字起こし自体には不要とみられる |
| 通話録音 | 録音後 | 不明 ※Appleは明記せず | 文字起こし自体は不要 | 文字起こし自体には不要とみられる |
| AI要約 | 文字起こし後 | 可能な処理はオンデバイス | 必要 | 利用される場合あり |
※なお、Apple Intelligenceが関係するのは主に文字起こし後の要約機能です。ライブキャプションについてはAppleがMac版でオンデバイス処理を明記していますが、ボイスメモやメモ、通話録音の文字起こしについては、処理場所をAppleが明記していないため、断定は避けるのが安全です。
