AirTagの通知が生体認証なしで切れると米国で提訴〜盗難デバイスの保護も対象外

白いリングに囲まれたAirTag。銀色の面の中央にAppleロゴがある

米国の女性が、夫にiPhoneのパスコードを使ってAirTagのトラッキング通知を切られていたと主張し、Appleを提訴しました。女性が問題視しているのは、知らないAirTagが一緒に移動していることを知らせる通知を、顔認証なしにパスコードだけでオフにできる点です。

夫がパスコードで通知を切ったと米女性が提訴

海外メディアによると、ワシントン州の女性が現地時間10月27日、タコマの連邦地方裁判所でAppleを提訴しました。訴状によると、夫は子どものおむつバッグや車2台に、少なくとも3個のAirTagを隠していたとされています。

州外への旅行などの際、周囲の人のiPhoneにはAirTagの警告が届いたものの、女性のiPhoneには一度も届かなかったそうです。夫は女性のパスコードを知っており、トラッキング通知を繰り返しオフにしていたと訴状は主張しています。

女性はAppleに対し、トラッキング通知の設定変更時に生体認証を必須とすることや、通知がオフにされた場合に本人へ知らせる仕組みを導入することなどを求めました。損害賠償とともに陪審裁判を請求しており、Appleはまだコメントを出していません。

AirTag訴訟は8月から相次ぐ

AirTagを使った追跡を巡るAppleへの訴訟は、この夏から相次いでいます。8月にはミシガン州の女性2人が、9月にはオレゴン州の女性が、追跡の通知が届かなかったなどとしてAppleを提訴しました。

オレゴン州の訴状は、2021年4月〜2024年4月にAirTagを使ったストーキングの苦情が4万件を超えたと主張しています。2022年12月には米国で集団訴訟も起きており、AirTagの悪用を巡る法的な争いは4年近く続いてきました。

トラッキング通知はパスコードだけで切れる

知らないAirTagと一緒に移動していると、iPhoneには「あなたと一緒に移動しているAirTagが見つかりました」という通知が届きます。この通知は「設定」アプリの「通知」にある「トラッキング通知」から、ほかのアプリと同じようにオフにできる仕組みです。

Appleの案内によると、トラッキング通知を受け取るには、通知の許可に加えて、位置情報サービスやBluetoothなども有効にしておく必要があります。通知を受け取れなくなる可能性がある設定は次の通りです。

設定の場所通知が届かなくなる状態
設定>通知>トラッキング通知「通知を許可」がオフ
設定>プライバシーとセキュリティ>位置情報サービス位置情報サービスがオフ
設定>BluetoothBluetoothがオフ
設定>機内モード機内モードがオン

Appleはこのほか、「位置情報サービス」内の「システムサービス」にある「利用頻度の高い場所」をオンにすることも案内しています。これは、自宅などの重要な場所に到着したことをiPhoneが認識し、その際に通知を出すための設定です。

表に挙げた設定は、iPhoneのロックを解除できれば、いずれも数回のタップで変更できます。パスコードを知っている人なら、持ち主が操作を見ていない間に、トラッキング通知をオフにできる可能性も否定できません。

位置情報サービスやBluetoothをオフにすると、地図アプリの一部機能やBluetoothイヤホンなどが使えなくなるため、持ち主も異変に気づきやすいでしょう。一方、トラッキング通知は追跡されていない限り届かないため、オフにされていても気づく機会がほとんどありません。

AirTag(第2世代)はスピーカーの無効化が比較的簡単だと指摘されています。スピーカーが無効化されて音が鳴らなくなったAirTagを発見するには、iPhoneのトラッキング通知が重要な手がかりです。その通知を切られると、本人が追跡に気づく手がかりは限られてしまうでしょう。

盗難デバイスの保護も通知設定は対象外

iPhoneには、パスコードを盗み見られた場合に備える「盗難デバイスの保護」という機能もあります。よく知っている場所の外では、保存したパスワードの使用やパスコードの変更などに、Face ID(顔認証)やTouch ID(指紋認証)を求める仕組みです。

Appleのサポートページには、生体認証が必要な操作が10項目、1時間の待機が必要な操作が8項目列挙されています。このなかに、トラッキング通知の設定変更は含まれていません。原告が求める、トラッキング通知の設定変更時に生体認証を必須とする保護は、現在のiPhoneには用意されていない状況です。

また、盗難デバイスの保護は、初期設定では自宅などのよく知っている場所にいる場合、一部の操作に対する追加の認証が求められません。そのため、同居する相手にパスコードを知られている場合の対策としては限界があります。

家族共有のAirTagは通知を止められる

家族によるAirTagの悪用を考えるうえで、もう1つ注意したいのが通知を停止できる仕組みです。ファミリー共有グループのメンバーからAirTagなどを借りている場合、表示された通知をタップすると、その持ち物の通知を1日または無期限で止められます。

本来は、家族の持ち物を借りたときに何度も通知が出ないようにするための機能です。ただし、AirTagの持ち主が同じファミリー共有グループにいる場合、追跡されている人のiPhoneを第三者が操作して通知を停止すると、その後は同じAirTagが近くにあっても通知が表示されなくなるおそれがあります。

通知が切られていないか確かめる方法

心当たりがある場合は、iPhoneの設定と「探す」アプリを確かめておきましょう。確認する場所は次の通りです。

  • 「設定」>「通知」>「トラッキング通知」で「通知を許可」がオンになっているか
  • 「設定」>「プライバシーとセキュリティ」>「位置情報サービス」がオンになっているか
  • 「探す」アプリの「持ち物を探す」画面を一番下までスクロールし、「あなたが所持中の見つかった不明な持ち物」に見覚えのない持ち物が表示されていないか

ただし、「探す」アプリの一覧に表示されるのは、最近トラッキング通知が発生した持ち物です。何も表示されないからといって、近くに不明なAirTagがないとは限りません。

パスコードを知られている心当たりがあれば、変更しておくと安心でしょう。盗難デバイスの保護で「常に」を選んでおけば、自宅などでもパスコードの変更に生体認証と原則1時間の待機が必要です。

AirTagが見つかって身の危険を感じるときは、警察に相談するようAppleも案内しています。日本でも2025年12月30日から、恋愛感情や、それが満たされなかったことへの怨恨などを背景に、相手の持ち物に無断でAirTagを取り付ける行為などが、改正ストーカー規制法の規制対象です。

訴訟の行方によっては、トラッキング通知の設定変更時に生体認証が必要になる可能性もあります。現時点では、通知がオフにされていないか、定期的に設定を確認しておくことが対策の1つです。

Photo: Apple

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