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2014年9月2日 12時49分

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【書評】デザインと経営の視点でアップルの次の一手を考える:デザインマネジメント

「デザインマネジメント」表紙
 
本書の帯には「根底にはデザインがある。アップル、グーグル、ダイソンの経営の基本はこれだ!」と書かれています。最初に断わっておきますが、本書はこれら外国企業のデザイン戦略の分析・評論はしていません。
 
本書に記されているのは、日本のエアコンから「スリット」を消し、携帯電話に革や木を使ったデザインを持ち込み、多くの革新的デザインで世界的評価を獲得している気鋭のデザイナーが明かす、「デザイン」と「マネジメント」を融合させる思考術です。

デザイン、経営やチームマネジメントに関心を持つ方は一読の価値あり

2008年に「amadanaケータイ」として話題を呼んだ、ドコモの「N705i」を覚えている方も多いでしょう。革や木という携帯電話に組み合されることのない素材のほか、画面デザインや着信音などにひと癖もふた癖もあるこの携帯電話は、2008年の出荷台数ナンバーワンに輝きました。本書の主著者である田子學氏は「amadanaケータイ」などの代表作を持つデザイナーです。
 
「amadanaケータイ」ドコモN705i
 
デザイン」というと製品の色や形状を決めること、と考えられがちです。狭義にはそれで間違っていませんが、本書ではデザインとは企業の理念や販売現場、ユーザーの体験などが一気通貫で考え抜かれ、経営と一体化した「デザインマネジメント」が必要だ、と主張されています。
 
本書は、プロダクトデザインや経営に関心を持つ方はもちろん、優れた成果を出すためのチームマネジメントを考えてみたい方にも一読をおすすめします。

iPodのすごさは「仕組み」の提供

2001年にアップルがiPodを発売した当時、著者の田子氏が在籍した東芝では、「なぜ自社であの製品ができないのか」といった会話がされていました。田子氏は、iPodが本質的にすごいのは、iTunes経由で音楽をダウンロードすることで手軽に音楽を楽しめる「仕組み」を提供したことだと指摘します。しかし「仕組み」を提供できないまま、売れないハードウェアを世に出して失敗する日本メーカーが続出しました。
 
多くの日本企業が「何を作るか? (What)」からスタートしてしまうのに対し、アップルは「なぜ作るか? (Why)」からスタートし、素晴らしい製品を生み出している、とも紹介されています。

iPhoneに流れる「デザインマネジメント」の思想

アップル製品の魅力は、外観上のデザインだけではありません。事実、iPodやMacbook Airの大ヒット後、多くのメーカーが似たようなデザインの製品を投入しましたが、その多くは成功に至っていません。
 
本書の論旨に沿って考えると、アップルはハードとソフトといった製品のみならず、広告やエンドユーザーと接触するApple Storeという販売チャネルまで、一貫した思想のもとにデザインしている、まさに「デザインマネジメント」を世界規模で実践している企業であると理解できます。
 
iPhoneは、スティーブ・ジョブズ氏が「片手で操作できる」ユーザー体験を重視したため、iPhone5sまで画面サイズが4インチにとどまっていると言われています。カメラの画素数やCPUのコア数やクロック数などでライバルがスペック競争を繰り広げる中、iPhoneは個々のパーツのスペックが目立たなくてもトータルで優秀な操作性を実現してきました。これは端末だけでなくOSを自社製作する強みを活かした最適化チューニングの成果と見られています。

iPhone6やiWatchにデザインマネジメントは生きているか?

アップルは、2011年のスティーブ・ジョブズ氏の死去以降、革新的な製品を世に出せていない、と指摘されることがあります。常に猛スピードでの変化と刺激を求められる業界において、その指摘は致命的となりうるものです。
 
2年ぶりの大幅モデルチェンジが見込まれるiPhone6やウェアラブル端末iWatch、あるいは将来のアップル製品が、見た目だけでは無く製品を基軸としたユーザー体験がどのように「デザイン」されて現れるか?本書を読んでから見守ると、興味深さもひと味違うはずです。
 
 
書籍情報:「デザインマネジメント」、田子學ほか、2014年7月、日経BP社、2,160円(税込)、Amazon
参考リンク:N705i特設サイト
執 筆:hato

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