中国のディスプレイ大手BOEが、成都に新設した第8.6世代有機EL(OLED)生産ライン「B16」で、稼働開始後約6カ月にわたり大型ガラス基板の亀裂や破損トラブルの解消に苦慮していることが明らかになりました。
BOEはApple向けOLEDの受注拡大を目指しており、今回の問題が長期化すれば、品質認定や量産開始時期にも影響を与えるおそれがあります。
BOEの大型OLEDラインで基板破損
報道によると、成都のB16生産ラインでは第8.6世代OLEDの初期生産段階から、ガラス基板に亀裂が入ったり破損したりするトラブルが断続的に発生している模様です。
発生頻度は1,000枚あたり2〜3枚程度とされています。割合だけを見れば0.2%〜0.3%ですが、大型ガラス基板が製造装置の内部で割れると、破片の除去や装置点検が必要になり、復旧まで半日〜1日かかることが問題になっています。
つまり今回の課題は、不良品に起因する歩留まり率の低下とは異なり、1枚の破損によって生産ライン全体が長時間停止する点にあります。
原因の特定は難航
BOEは2つの生産ラインを稼働させながら原因を調べているようですが、装置、材料、製造条件のどこに問題があるのか、現時点では特定できていないと、The Elecは報じています
発生頻度が低いことがかえって、一定条件で再現させて原因を突き止めることを難しくしている点も、解決を長引かせている要因になっていると考えられます。
Apple向けOLEDの認定に影響懸念
The Elecは、この問題が長期化すればApple向けOLEDの品質認定が遅れたり、BOEが受注を獲得するハードルが高くなったりするおそれがあると指摘しています。
BOEは現在、Apple向けOLEDの供給範囲を、iPhone17e向けおよびiPhoneの補修用以外にも広げようとしているとの情報があります。
2027年モデルのiPad Air向けOLEDについては、重慶のB12工場にある第6世代OLEDラインを使い、Samsung Displayに続く第2サプライヤーの座を狙っていると噂されていました。
一方、今回不具合が発生しているB16生産ラインでは、将来のMacBook Pro向けOLED供給を目指していますが、Apple向けの本格供給は2028年以降になるとの見方もあります。
問題はOLED種別よりもガラス基板の大きさ
2027年のiPad Airに搭載されるOLEDは、発光層が1層のシングルスタック構造と多結晶低温ポリシリコン(LTPS:Low Temperature Polycrystalline Silicon)バックプレーンを採用し、最高リフレッシュレートが60Hzになると予想されています。
iPad ProのタンデムOLEDと比べれば構造は簡素で、製造コストも抑えやすい仕様です。ただし、今回のB16生産ラインで問題になっているのはOLEDの種別に起因する課題ではなく、大型ガラス基板の取り扱いです。
第8.6世代は大型のガラス基板からノートパソコンやタブレット向けパネルを効率よく切り出せるため、量産時のコスト削減に有利とされています。
その一方、基板が大型化すれば搬送や熱処理、製品の均一性を保つ難易度も上がるのが課題となっていました。
BOE参入遅れで価格競争も弱まる?
BOEがApple向け中大型OLEDの供給に加われば、Samsung DisplayやLG Displayとの競争が生まれ、Appleが調達価格を引き下げやすくなることが期待できます。
反対に、BOEの量産立ち上げが遅れれば、韓国のディスプレイサプライヤーへの依存度が高い状態が長く続くことになります。
特にOLEDへの切り替えが進むiPadやMacでは、ディスプレイパネルの卸価格(Appleにとっては仕入れ価格)が販売価格を左右する要素の1つです。
新型iPad miniではOLED化に伴う大幅な値上げも噂されており、今後iPad AirやMacBook AirまでOLED採用が広がるのであれば、供給元の多角化はユーザーにとっても無関係ではありません。
Source: The Elec
Photo: Apple Hub/Facebook
