AppleがVision ProやSiriなどの部門で200人を超える人員を削減したと、8月21日に報じられました。対象には、ゲームや没入映像の制作チーム、従来のSiriを担ってきたチームが含まれます。Vision ProやvisionOSの開発そのものを終えるわけではないと、社内には説明されたようです。
ただし2027年に投入されるスマートグラスは、没入映像にも高度なゲームにも対応しないとみられます。
AppleがVision ProとSiriで200人超を削減
人員削減の内訳は、Vision Proの部門で約100人でした。Siriやソフトウェア関連の部門でも、約100人が対象になっています。ソフトウェア部門では、端末の上で動くAI機能を開発するチームも含まれました。Appleは今回の変更について、新たな職種を設ける一方で、既存の一部の職種には影響が出ると説明しています。
単純に人を減らすのではなく、開発方針にあわせて配置を見直す動きでしょう。
削減の人数は、報じられた時期によって食い違います。当初はVision関連の部門で少なくとも60人とされ、その後は約100人と伝えられました。いずれもAppleが公式に発表した数字ではないため、実際の規模には幅があるとみておきたいところです。
Appleはゲーム体制をほぼ閉鎖して没入映像も縮小
Vision Proの部門では、ゲーム関連チームの大部分が閉鎖されると報じられています。Apple Immersive Videoを制作するチームも、縮小の対象になりました。Immersive Videoは、Vision Proならではの体験としてAppleが力を入れてきたコンテンツです。スポーツやライブを視界いっぱいに映し出す点が特徴でした。
ただし制作コストは高く、1本あたり数百万ドル規模になる場合もあるとされます。利用者が限られるなか、高額な費用が事業の負担になっていたようです。今後は自社の制作を減らし、外部が手がける作品を増やしていくとみられます。
Immersive Videoそのものが終わるわけではありません。
削減された人員はApple全体の0.12%強に相当
今回の削減は200人を超える規模ですが、Apple全体で見れば小さな比率にとどまります。Appleのフルタイム従業員は、2025年9月末の時点で約166,000人でした。
200人として単純に計算すると、削減された人員は全体の0.12%強にあたります。しかも従業員の数は、2025年9月末までの1年間で約2,000人増えていました。
会社全体で人を減らしているわけではなく、特定の開発領域を対象にした組織再編と考えるほうが自然でしょう。製品やサービスそのものの開発は、今回の対象から外れています。人員を保ったまま、開発資源を重点分野へ振り向けた形です。
過去の削減では600人超が対象になったこともある
Appleでは過去にも、数百人規模の人員削減が行われてきました。2024年3月には、電気自動車の計画終了などに関連して614人へ通知が出されています。
同じ年の8月には、Apple BooksやApple Newsなどの部門で約100人が対象になりました。今回の200人超は、これらと比べて異例の規模ではありません。
違うのは、すでに販売されている製品の開発体制が見直された点です。電気自動車のときは、市販の製品が世に出る前に計画そのものが終わりました。今回はVision ProとvisionOSを続けながら、一部の体制だけを縮めています。
畳んだのは計画そのものではなく、力を入れる範囲のほうです。
Vision Proは発売後も計画の見直しが続く
Vision Proが発売されたのは2024年6月28日で、価格は599,800円からでした。2025年10月22日には、M5チップを搭載した新モデルが登場しています。
価格は初代と同じく599,800円からで、大幅な値下げで普及を狙う道をAppleは選びませんでした。一方で、廉価版や次世代モデルの計画は何度も見直されてきたようです。
| 時期 | 動き |
|---|---|
| 2024年6月28日 | Vision Proが発売。599,800円から |
| 2025年10月 | 廉価・軽量版の開発を停止し、スマートグラスへ人員を振り向けたと報道 |
| 2025年10月22日 | M5搭載Vision Proが599,800円から発売 |
| 2026年5〜6月 | 次世代Vision Proの登場は2年以上先になる可能性が報道 |
| 2026年7月 | 廉価版向けとされるディスプレイの開発終了が報道 |
| 2026年8月 | ゲーム体制を大幅縮小しImmersive Videoチームも縮小 |
2026年7月には、廉価モデルの発売計画が白紙になったと報じられました。廉価版向けとされるディスプレイの開発終了も、同じころ伝えられています。低価格化で利用者を広げる計画も、専用コンテンツを厚くする動きも弱まりました。
発売から2年のあいだ、Vision Proをめぐる計画は縮む方向にそろってきています。
2027年のスマートグラスは没入映像に対応しない
削減の対象になった社員には、Vision ProやvisionOSの開発を終えるわけではないと説明されたようです。Vision Proの開発自体は、今後も続く見通しになります。
ただしAppleが次に力を入れるとされる製品を見ると、別の方向性が見えてきました。2027年に、AIを中心としたスマートグラスを投入すると報じられています。
この製品が没入映像や高度なゲームに対応することはないようです。仮想空間へ没入する機器ではなく、カメラやマイクで周囲を捉えてAIを日常で使う道具になります。重視されるのは映像表現よりも、装着しやすさや応答の速さになりそうです。
Appleのウェアラブル戦略は、没入型の体験からAIの日常利用へ重心を移しつつあるとみられます。
Siriでは従来型の開発を担う役割を削減
Siriの部門では、削減の事情が少し異なりました。対象に含まれたのは、従来のSiriの開発を担ってきた役割の一部です。
Appleは新しいSiri AIの開発にあわせて、必要な技術と人材を見直しているとされます。つまりSiri AIの開発を止める動きではありません。
Siri AIはiOS27で大きく刷新され、Dynamic Islandから呼び出せるようになります。専用のアプリも用意される予定です。
AppleはSiri AIに配信するニュースの調達にも動いており、必要な中身をそろえる取り組みが進みました。配置を見直す一方で、次世代Siriへの投資は続いています。
Vision Proの後継モデルは当面先になる可能性
今回の組織再編で、Vision Proの次世代モデルが近く登場する可能性は下がりました。ただしvisionOSの開発は続くため、いま使っている製品がすぐに対象から外れるわけではありません。
一方で、Apple自身が制作するImmersive Videoは今後減る可能性があります。楽しめる中身は、外部が作る作品や日常的な機能へ比重が移っていきそうです。
Siri AIはどうなるでしょうか。iOS27のSiri AIは、まず英語向けに提供され、その後ほかの言語へ広がる予定です。今回の再編が時期に響くかどうかは、現時点では分かりません。
後継モデルを待つ選択肢は、少なくとも短期では細くなりました。開発資源がAIスマートグラスへどこまで移るのかが、これからの焦点になりそうです。
