厳格なApp Storeのアプリ審査、リアルな舞台裏が取材で明らかに

    apple アプリ app store

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    Appleの高いセキュリティを裏付けるものとして、App Storeでの厳格なアプリ審査はよく知られています。この審査について、米メディアCNBCが一般には知られていない内幕を解説しています。

    Apple社員がすべてのアプリを手動で確認

    Appleの審査に頭を悩ませるアプリ開発者は少なくありません。厳しいガイドラインに準拠している必要があるほか、Appleのレビュー担当者に承認されない限り、アプリ公開に漕ぎ着けることができないからです。
     
    例外なしに全てのアプリやアップデートがApp Reviewと呼ばれる部門の承認を通して管理されています。どのアプリも担当者によって手動で確認が行われます。
     
    CNBCに事情通が語ったところによると、申請を受けた後24時間~48時間以内に50%のアプリを審査することをAppleは目標としていますが、昨年7月末の時点では6%に留まりました。そのため審査スピードを早めるべく、1日12時間体制で業務が続けられたこともあったほか(決して個人が1日12時間以上働かないよう、内部向けメールには記載されていた)、最近は大規模な人員増や支部の増設が実施されているそうです。

    耳の痛いオフレコ話も

    レビュー担当者は1日に50~100のアプリを審査しており、使用デバイスは基本的に「たとえiPhoneアプリだろうと」iPadだそうです。言うまでもなく、彼らにデバイスが用意されていないわけではありません。CNBCの記事では、複数のアプリ開発者が「App Reviewとのやり取りの中で、iPhoneのアプリなのにiPadのスクリーンショットが出てきて驚いた」と告白しています。
     
    また、ほとんどのレビュー担当者が1つのアプリに数分しか割かない(多くのアプリが単純な挙動のために審査がすぐ終わるのも理由ですが)ことも暴露されています。決して楽な仕事ではなく、新しいiOSがリリースされた時などはとりわけ過酷なのだそうです。
     
    さらに、時には児童ポルノなど犯罪絡みのアプリや、健全な内容を装った詐欺目的のアプリなどと向き合う必要もあります(発覚すれば当然リジェクトされます)。

    大鉈を振るうフィル・シラー副社長

    審査はApp Reviewの現場だけに留まりません。
     
    この中でもガイドライン瀬戸際の問題含みなアプリやiPhoneのソフトウェアプログラムは、幹部レビュー評議(ERB:Executive Review Board)と呼ばれる毎週の役職会議で審査にかけられます。
     
    グレーなアプリに対して裁量で大鉈を振るうのですから、Appleの価値観を体現しているような人物でないと務まりません。この会議はAppleのワールドワイドマーケティング担当上級副社長を務めるフィル・シラー氏が取り仕切っています(レビュー用オフィスに姿を現すのは稀だそうですが)。
     
    Phil Schiller フィル・シラー
     
    ERBで象徴的なのが、2018年にApp Storeから取り下げられた「Infowars」アプリです。
     
    “排外主義的な陰謀論”を唱えているとされるアレックス・ジョーンズ氏がリリースしたこのアプリは18年9月、App Storeから「不適切なコンテンツ」として永久追放されました。しかし一方で、いくら「私たちのストアです。私たちが責任を持ちます(Appleが19年5月に公開した特設ページ内の文言)」と言ってみても、巨大なプラットフォームを持つ企業が特定の政治的主張を排除すべきでない、といった指摘も可能です。
     
    ここで活躍したのがERBとシラー氏で、ジョーンズ氏がCNN記者に対して脅しを加えたのをきっかけとして、彼らの判断でアプリの排除に踏み切ったそうです。また、ERBが関係しているかは分かりませんが、最近も「13歳未満の子供でも会員登録できる出会い系アプリ」が児童保護を目的としてストアから削除されています。

    厳しい審査には批判もあるが

    しかし厳しい審査は、裏を返せばAppleがコントロールを強く効かせていることを意味します。
     
    apple アプリ app store
     
    こうした態度を快く思わない層がいるのも事実で、Appleは最近も「私たちの使命は、すべての人に最高のストア体験を届けることです」と題したページで、「優れたユーザー体験をもたらすこと」や「デバイスをマルウェアや脅威から保護すること」を目的として審査を行っていることを表明し、透明性のアピールに努めています。
     
    ともあれ重要なことは、細かな問題こそありつつも、直々にAppleの従業員が手動で実際にアプリの挙動をチェックし、最終的にはトップのフィル・シラー副社長によって審査される体系が社内でしっかり構築されている事実でしょう。App Storeの健全性はこのような舞台裏で支えられているのです。
     
     
    Source:CNBC,Apple
    (kihachi)

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