話題のジャーナリスト、Foxconnの潜入取材ルポを公開

    自殺 foxconn

    自殺 foxconn
     
    iPhoneの生産を請け負うFoxconnなしにAppleを語ることはできませんが、熾烈な環境で働く従業員なしにFoxconnを語ることもできません。書籍「The One Device: The Secret History of the iPhone(たった1つのデバイス:iPhoneの知られざる歴史)」を最近上梓した、ジャーナリストのブライアン・マーチャント氏が、FoxconniPhone生産に携わってきた従業員の悲痛な叫びを、英メディアThe Guardianに寄稿しています。

    人間にとって良くない場所だ

    「自殺なしではFoxonnじゃない。毎年、人が自殺する。彼らは普通のことだと考えているのさ」
     
    そう吐き捨てるように語るのは、Foxconnの組み立て工場に務める従業員・シューさんです。毎年、新たなiPhoneの生産を間近に迎えると、Foxconnの工場が従業員で溢れかえるのがもはや風物詩となっていますが、労働環境は劣悪そのものだそうです。
     
    「人間にとって良くない場所だ」「何年も働いているがコンディションは年ごとに悪化している」と彼が語るように、仕事ではまさにマシーンと化すことを強いられます。
     
    例えば、ある女性従業員は毎日iPhoneのディスプレイを磨く業務を担当していますが、1日に1,600台分を完成させます。1分あたり3枚、それを12時間続けるというのですから、気がおかしくなるのも無理はありません。ミスでもすれば、わざとみんなの前で上司にこっぴどく罵倒されます。

    「寮を無料で提供」のカラクリ

    12時間の労働ともなると、従業員は住み込みで働くことになります。しかし、その寮がまた地獄なのだとは、先述したシューさんの談です。
     
    自殺 foxconn
     
    「Foxconnを狐の罠(Fox Trap)と呼んでいる。理由は多くの人間を騙すからだ」。彼によれば、Foxconnは寮を無料で提供すると約束するものの、いざ到着するとそこには8〜12のベッドが所狭しと敷き詰められているだけ。さらには、カラクリが隠されており、電気代と水道代に高額な料金が課せられる仕組みになっているのだとか。挙句に社会保険は遅延や支払い回避が当たり前。契約期間である3カ月を前に辞めると罰金が待っているそうです。
     
    こうした劣悪な労働環境の実態は、メディアによって大きく批判を浴びましたが、彼は「メディアの報道から何も変わっていない」と嘆きます。

    自殺の翌日には初めからすべてが存在していなかったようになる

    飛び降り防止のため、Foxconnの工場にはセーフティーネットが設置されているそうです。しかし、そのネットはボロボロになっており、とても機能するとは思えません。従業員は「それにネットは問題じゃない。どのみち、死ぬことを決意したやつは、どうしたって自殺するさ」と語ります。「誰かが死んでも、翌日には初めからすべてが存在していなかったのようになる」と、彼の友人も肩をすくめながら同調します。
     
    自殺 foxconn
     
    かつてスティーブ・ジョブズ氏は「自殺は悲劇だが、Foxxonnの自殺割合は中国の平均よりも下だ」と語りましたが、この発言こそ、Foxconnの従業員が一体どのような存在なのかを、如実に示したものだと言えるでしょう。現在、文字どおり従業員は次々とロボットに置き換えられています。

    取材時期からはサプライヤーもAppleも色々と変わった

    ただし、名誉のために補足しておくと、マーチャント氏がFoxconnで取材を敢行したのは2010年。それから7年という年月が経つまでの間に、自殺何度も起き、2014年にはティム・クックCEOが急きょ中国へ飛んで現地を視察するという出来事もありました。
     
    また、問題を重くみた人権団体から定期的な抜き打ちチェックを受けることにもなり、以前に比べれば少しずつ環境は改善しつつあるとするレポートが出ています。少なくともティム・クック体制のAppleが、真剣にこの問題の改善に取り組んできたのは確かでしょう。
     
    しかし、それでも我々が手にしてきたスマートフォンが、気が狂うような重労働によって成り立ってきたことも、また確かなのです。
     
    Source:The Guardian
    (kihachi)

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    この記事を書いた人

    丸みを帯びたiPhone3GSの筐体に惚れ込み、Apple信者を誓ったのも今は昔。2014年から始めたライター業がきっかけで、気づけばXiaomiやHuaweiなど中華スマホにも手を出す浮気症に。

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