Appleを退職した50人以上のエンジニアたちが、あるスタートアップを選んだ理由

Pearl New York Times

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AppleでiPhoneやiPodの開発に携わっていたエンジニアが、全社員80名のうち50名以上を占める企業があります。彼らが、世界の誰もが知る会社でのポジションと高給を捨てて、新天地で得たものは何でしょうか。

Appleを去った50人以上のエンジニアが働くPearl

2016年6月にiPhone Maniaでもご紹介した自動車のナンバープレートフレーム型の後付けバックカメラ「RearVision」を開発・販売するPearlは、Appleを去った3人のエンジニアが2014年に起業したスタートアップ企業です。
 
Pearl
 
その後、Appleを退職したエンジニアたちを雇い入れ、全社員80名の6割超にあたる50名以上がApple出身者となっています。
 
米New York Times紙が、Pearlの現役社員たちのインタビューを掲載しているので、抜粋してご紹介します。

自分が何を守っていたのかも分からなかったAppleでの日々

2010年、Appleのエンジニアが開発中のiPhone4をバーに置き忘れるという事件が発生した時、極秘の試作品を追跡し、遠隔で破壊する任務を担当したブライアン・ラティマー氏は、サプライヤーに機密情報保護について指導し、情報流出を避けるための製造ライン分割を担当していました。
 
ラティマー氏は、自分が守ろうとしている機密が何なのかすら、知らされないままに働いており、他の従業員と同様、同僚たちと自分の仕事について話さないよう求められていました。
 
現在、Pearlで活き活きと働くラティマー氏は、「とても開放的で、皆が何をしているのか、知ることができる」と語っています。

給料は高いが細分化された仕事にうんざりする社員たち

「Appleの給料は非常に高いが、Appleの新入社員たちはiPhoneやMacの小規模な改善作業をこなす日々にうんざりしていた」とPearlの共同創業者であるブライアン・サンダー氏は語っています。
 
Appleの共同創業者、スティーブ・ジョブズ氏が退いた後も、Appleでは意思決定はトップ経営陣が行う、典型的な中央集権型マネジメントが敷かれているそうです。
 
自身が創業したモバイル広告企業をAppleに買収され、4年間Appleに在籍したエスワー・プリヤダシャン氏は「Appleの高給と製品に特化した任務、トップダウン型の意思決定は、起業しようとリスクを取る気を喪失させるものだ」と感じたそうです。
 
Appleで7年間、iPodやiPhone等の開発を担当し、Pearlを共同創業したブライソン・ガードナー氏は「私の会社ではたくさんのリーダーを育てたい」と、Appleの対極にある意思決定プロセスを築こうとした、と語っています。
 
一方、Pearlは古巣・Appleの良いところは積極的に取り入れています。
 
それは、開発業務に期限を設け、欠陥が出れば徹底的に調査する体制や、製品を構成する個々の部品に至るまで美しいデザインを追求する姿勢に表れています。

「古い車にも新車と同様の安全機能を」

Appleで11年間にわたってiPodのハードウェアエンジニアをつとめたサンダー氏は、Pearl創業にあたって「道を走っている古い車に、最新モデルの新車と同様の安全機能を提供する」という理念を掲げました。
 
Pearl
 
Pearlのエンジニアたちは、すでに自動駐車システムをはじめとする、将来の運転支援製品の研究開発に取り組んでいます。
 
Pearl最初の製品「RearVision」は、500ドル(約59,000円)という競合製品よりも高めの価格もあり、評論家からの絶賛が販売面での成功に結びついていないのが実情です。
 
Pearl RearVision
 
それでも、本体に内蔵したソーラーパネルで発電し、暗視カメラを含む2台のカメラで撮影した映像を、ワイヤレス接続した運転席のスマートフォンの画面に表示するシステムは、ソフトウェアのアップデートで簡単に機能の更新が可能というメリットがあります。
 
残念ながら、「RearVision」はアメリカ向け販売のみで、日本など外国への販売は行っていないとのことです。
 

 
 
Source:The New York Times
(hato)

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この記事を書いた人

2013年からライター&編集担当として活動。2007年、駐在中のシリコンバレーで発売直後の初代iPhoneに触れて惚れ込む。iPhone歴は3GS→5s→6 Plus→7 Plus→XS Max→12 Pro Max→14 Pro。

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